誰もが認めるDenver Nuggetsのエース、Nikola Jokic(ニコラ・ヨキッチ)。
昨年はMVPも獲得し、Joel EmbiidやADなどと共に、センター時代がまた到来するという意見が生まれる理由の1人です。
センター歴代でも稀に見るアシスト能力の高さや跳躍力を必要としないリバウンド力(褒めてる)、フックショットからスリーまで打てるシュートレンジの広さや得点スキルの豊富さなど、魅力は沢山ある選手ですが、その中でも彼の代名詞になりつつあるのが“The Somber Shuffle“。(サンバーシャッフル)
名前がついているだけで必殺技みたいでかっこいいですね!
Somberとは直訳すると「暗い・陰気な」という意味ですが、ここでは「地味なムーブ」とでも訳しておくと分かりやすいでしょうか。
One-Legged Fadeway(片足フェイダウェイ)と言われたり、彼のスローなムーブや運動能力の低さから当初はGoofy Jumper(間抜けなジャンプシュート)と言われたりもした彼のこのシグネチャームーブですが、実はいわゆる怪我の功名。
2017年シーズン中に左足首を捻挫したことがきっかけで、左足に体重をかけないままシュートを打ちたかったJokicがなんとか編み出した方法がこれだったとか。
ダイナミックな動きをしないそれは運動能力のなさから編み出されたというよりは、なるべく負担のかからない最小限の動きで効果を発揮しようとした結果だったんですね。
片足フェイダウェイと言われると、白人外国人のイメージと相まって真っ先にDirk Nowitzkiのジャンパーを思い浮かべてしまう人は多いかと思います。
JokicがDirkの動きを参考にしたかまではわかりませんが、彼のこれは言わばDirkの独自解釈版と言っても良さそうな感じ。
違いといえば、フェイダウェイをするというよりは半歩ずつ横・後ろにズレるイメージです。ステップバックを組み合わせているぶん今の流行に乗っているようにも思います。と思ったら大きな一歩で移動したり、逆にほとんど動かないようなものもあったりして応用に幅がありそうです。
Kobeを始めLeBron、KDなど名だたるスコアラーたちがDirkの優勝後、彼の片足フェイダウェイを真似しその有用性を証明させていたわけですが、Jokicのこれも同様止めるのが難しいそうです。
理由をDraymond Greenが語っています。
”彼を止めるために身体を使って押し出そうとするとかわされるんだ。くるっと回ってね。片足シュートで数本決められた。彼にシュートを決められるのはとてもストレスが溜まるよ。悪いシュートを打たせるために出来ることをやれるだけやっても、リングに当たりもしない程正確にシュートを決められる”
“You just try to use your strength the he just roll off, you know, spin right off. He hit a couple of those right foot. He shoot on me like frustrating as hell. You feel like you’ve done everything you could possibly do to make him a bad shot, and it hit nothing but the bottom of the net.”
-via postgame interview on ESPN
決め打ちというだけでなく、状況に応じて様々なパターンで変化させるのが彼の独自性。これを使いこなせるのはまだ彼だけのようです。これを使おうとする人がそんないるのかは別の話ですけど。
他にもリーグ屈指のDefensive Playerとして評価の高いMyles TurnerなどもJokicのこのムーブを”止められない”と認めている発言をしていて、本当に凄いシュートなんだということを感じさせます。
Jokicはこれをゲームで使えると思えるまでチームメイトやスタッフとHORSEで遊びながら練習したと言います。
※HORSEとは、シューティングで遊ぶバスケの遊び方。順番にシュートを打ち、シュートを決めた相手と同じシュートを真似て決められない度にHORSEのアルファベットが一文字ずつ与えられる。HORSEの文字が揃ってしまった方(つまり5回真似に失敗した方)の負け。通常トリックショットやロングショットなど、真似ることが難しいシュート勝負になる。
これがムーブを変化させる柔軟性を育んだことがわかります。
ひとつのアイディアをもとに、HORSEの中で様々なパターンを試し、打つまでのムーブを試したんでしょう。そう考えるとなんか納得。
そんな彼はつい先日、現地時間29日に左膝を痛めファンに血の気を引かせました。
彼は問題はなさそうと言っているそうですが、後半出場しようとしていたJokicをHCのMike Maloneは説得しました。
若干の不満を持ちながらもコートから下がるJokicが見えますが、このまま後半は出場せず。
それでも前半15分のみの出場で24得点6リバウンド6アシスト…15分のプレイでスター選手のスタッツを残すのは、恐いです。
そして29日のMavs戦では25分と少なめですがちゃんと出ているので、大事には至っていなさそう。
ただ、接触時の痛がり方や直後に足を引きずっていた仕草を見るとそれなりに痛んでいる事も確かでしょう。
今年NuggetsはセカンドスコアラーだったJamal Murrayの復帰がまだ未定の状態。MPJやAaron Gordonなど、3番手の飛躍的な活躍がないとプレイイン争いになるとMaloneコーチも言っています。
それだけ過酷な順位争いの今シーズン。Jokicありきのチームなだけに彼の健康状態は気がかりです。
しかし、前回もその故障をきっかけにしてスキルを蓄えたJokic。今回も膝の痛みを避けながらプレイできる何かを編み出してくれるかもしれません。もしくはThe Somber Shuffleを改良させて来たりして。
彼の運動能力の必要ない動きは一般人のプレイヤーからも試合観戦・視聴がためになる選手です。
ケガをした事で、というのは少し行儀が悪いですが、故障をした状態の彼はより工夫をしてプレイするはずなので見てる側からはとても興味深い展開になりそうです。
何も影響がない事が1番望ましいですが、全く故障せずにシーズンを過ごす方が珍しい世界です。Nikola Jokicはここから出場しないとまで行かなくともプレイタイムの調整をシーズン通して見据えていくはず。限られた時間でどうプレイしていくか、注目したいNuggetsとJokicです。
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