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シーズン前の契約延長が叶わなかったSextonから見えるチーム方針と、それを糧にする彼の闘争心

Cleveland Cavaliers
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NBAでは、シーズン開始前日までが期限と定められているRookie Contract Extension(ルーキーコントラクトエクステンション・新人契約延長)の交渉期間があります。

2018年にドラフトされNBA入りしたCollin Sexton(コリン・セクストン)は、ちょうど4年目を迎える直前、この期限のタイミングにあった選手の1人でしたが、所属しているチームCleveland Cavaliersと契約延長に合意することはありませんでした。

Cavaliers, Sexton fail to reach contract extension; Sexton can be restricted free agent after season
The two sides had until 6 p.m. to finalize a deal.

3シーズンを終えたSextonの評価は分かれるところにありますが、それはチームのファーストオプションとしての話。

確かにアウトサイドシュートの低調やターンオーバー数の増加など、好ましくない部分もありますが、昨シーズンに記録した平均24.3得点、FG47.5%、4.4アシスト、1.0スティールは見事な数字。特にその得点力とガードとしてFG%の高さはリーグトップレベルです。

今シーズン中に23歳を迎えるSextonは選手として素晴らしいポテンシャルを持っている事を疑う人はいませんが、では、それでもなぜCavsとSextonの間で契約延長が同意に到らなかったのでしょうか。

CavaliersはSextonを全体8位でドラフト指名した2018年当時から、彼を中心に据えての長期的な関係を作ることをアピールしてきました。

メディアデーでのインタビューでも、チームGMのKoby Altmanは”長い期間の関係”を強調し、HCのJ .B.Bickerstaffも彼を中心としたチームを見据えています。オフィス陣からもコーチ陣からも彼への期待は高いようです。

Cavaliers, Collin Sexton fail to reach contract extension. What does it mean moving forward?
The Cavs and Sexton failed to reach a contract extension before Monday's deadline. What does that mean for Cleveland long-term?

Sextonはいわゆる”Gymrats(体育館のネズミ)”と呼ばれるタイプの選手です。日本語で言えば”練習の虫”ですね。

The AthleticのKelsey Russoは記事の中で、Sextonがこの夏の間サマーリーグに出ていた若手選手やシーズン前のキャンプインを競っている選手達と混ざって自主的に実践的な練習に励んでいたことを語っています。

チームの施設をオフシーズンに使用したり、サマーリーグにも一緒にVegasまで赴いてトレーニングするなどコミュニティとの関係は良好な一方で、Sextonはその性格上契約問題のほとんどをエージェントに任せているそうです。

Sextonはバスケットボールに夢中になり、それだけに集中したい性格。コートの中でベストプレイヤーになる事がモチベーションの彼にとって稼げる金額の代償は些細な事のようです。

その状況を踏まえれば、今回はSextonの意向とは関係なく、なるべく良い条件で契約したいエージェントとチーム間の、要求と妥協が噛み合わなかっただけとも考えられます。

しかし、もし契約延長のオファーが4年以上、さらにはマックス契約かそれに近い金額であれば、エージェントとの折り合いがつかないはずがありません。

細かい交渉の内容は時間が経たなければリークがなかなかされませんが、チームからも長期的な関係を望まれ、本人もチームリーダーになる為の努力を惜しみなくしている中で契約に至らなかった理由は、チーム側が大型契約に踏み込む前に確認したかった事があるからだと思います。

1巡目指名でルーキー契約を受けた選手が契約延長をせず4年目に突入した場合、4年目シーズン終了後に制限付きFAになりますが、チームはまだその選手を確保する手段を持っています。

Rookie Contract Extensionの説明はこちら

この後Sextonとチームが行える選択は次の2つ。

  1. 今シーズン後にRFA(制限付きFA)になることを許すと、他チームからオファーをまず受ける事になる。他のチームが提示した中の最高額の契約をCavs側も払うことに決めれば、その契約でチーム(Cavs)に残留させる事ができる。Sextonにその金額に見合う価値がない、もしくは払えないとチームが判断すればSextonは契約をオファーしたチームに移籍する。
  2. 今シーズン中にCavsがQualifying Offerを提示して1年契約をする。Sextonはこの契約を受けもう1年Cavsに残れば、来シーズン後に制限なしFAとなり好きなチームと契約できる。

つまりCavs側にしてみればもう1年、Sextonの成長具合を確認してから契約に臨める、ということですね。もしかしたら本来必要だった契約額より少なく延長契約できる可能性もあります。

ではなぜチームが二の足を踏むのか、

その大きな部分にHGが目指すオフェンススタイルともう1人のガード、Darius Garlandの存在が関係しているように思います。

GarlandはSexton加入の1年後にドラフトでチーム入りしたPGで、Cavsのこのガードコンビは”Sexland”と呼ばれ愛されています。

SextonとGarlandの相性の懸念

コンプライアンス的に少し危ない気がする呼称なのはさておいて、彼らのスピーディーで若々しいプレイスタイルはファンに愛されている一方、2人ともそのプレイスタイルや役割が被っている為チームとして上手く機能しない、と一部ファンから批判の対象にもされています。

さらに2人のサイズの小ささもディフェンスの弱点になるとして、その意見に拍車をかけている状態です。

Darius Garland says he and Collin Sexton hear criticism about them, claims it’s ‘fuel for us’
The Cleveland Cavaliers backcourt of Darius Garland and Collin Sexton is a very promising one. However, many don't believe that the pairing will work out well b...

もちろん、2人はこの批判に対して闘争心を燃やしています。

GarlandはRaptorsのKyle LowryとFred Vanvleetが似たような状況で成功していた事を引き合いに出し、その批判が的外れである事を主張しています。

しかし、ただの批判としてではなく、チーム作りとして建設的な議論がされているのもまた事実です。

Sextonにリーダーシップを求めていたCavsですが、Cleveland.comのChris Fedorによるレポートでは、CavsはGarlandをチームのベストプレイヤーとして考えるようになってきていると言います。

Cavs Rumor: Darius Garland, not Collin Sexton is the centerpiece
The Cavs have privately decided that Darius Garland, and not Collin Sexton, is the future of the organization, flipping the script some.

Sextonの得点力は素晴らしいものですが、彼はボールを保持する時間が長いというマイナス面があります。FG%が高いのでefficiency(効率)をまだ保てているものの、ターンオーバーが2.8という数字は評価をしにくくなる懸念材料です。

Sextonは昨シーズン1試合にシュートを平均で18.4本打っています。これはチーム最多でした。

Garlandは14.9本FG45.1%とSextonより若干低め。

ですが、GarlandがSextonが持つ時間と同じくらいボールをコントロールできればSextonくらい得点できる可能性があることをインターネットメディアFansidedでは主張しています。

SextonのUsage Rate(試合中にどれだけボールに関わっていたか割合を示す数字)が29.2%。これはNBA全体のトップ20に入ります。一方のGarlandは24.9%。

Garlandはコートにいる時間、チームの総得点の31%に絡んでいて、Sextonの23%よりも上

アシスト6.1本の中でターンオーバー3.0は目立って良い数字ではなく改善してほしい部分ではありますが、Sextonのアシスト4.0、ターンオーバー2.8と比較すると明らかに良い数字です。

Garlandの方が3ポイントシュート確率が高い事(Sexton37.1%に対し39.5%)もこの意見の後押しになっているかもしれません。

Cavs: Collin Sexton has a style of play that isn’t conducive to winning
The Cavs young star player Collin Sexton may not be the best option to lead Cleveland into the future if he doesn't develop more three-point shooting.

小さい数字の積み重ねですが、Sextonにボールを持たせた上でこの僅かな差なら、Garlandがよりコントロールした方が良いという意見が出るのもわかります。

さらに、チームメイトがSextonのボール保持の長さにストレスを感じているというニュースも今年報じられた事があります。

NBA Rumors: Cavs Players Frustrated with Collin Sexton; Opponents Taunt Cavs
Collin Sexton has turned himself into a quality scorer in his third season with the Cleveland Cavaliers , but teammates are reportedly not always happy with t...

複数のCavs選手がSextonがボールをコントロールするやり方にストレスを募らせている。

試合中対戦相手はCavsの選手に向かって挑発する。「あいつはお前にパスしないんだろ?」

“Various Cavs players still grow frustrated by the way Sexton dominates the ball, and opponents taunt them by saying during games, ‘you know he’s not going to pass you the ball.'” 

-Joe Vardon of The Athletic

CavaliersはCollin Sextonをチームの中心に見据えていることは確かです。しかし今、優先順位は来年同じように契約延長期限が来るDarius Garlandに移っているのかもしれません。

J.B.Bickerstaffの方針

HCのBickerstaffが展開しようとしているオフェンススタイルもSextonに影響を与えているかもしれません。

Bickerstaffは昨年から試みていた”展開を早くするオフェンス”を本格的にチームのスタイルに落とし込もうとしています。

展開が早くなる中でSextonに有利な1対1の状況が生まれる場面を増やせて、Sextonの得点能力を活かせるとコーチ陣は考えているようです。

しかし同時に、目まぐるしく変わる状況の中正しいゲームメイクができるクオリティを求められることにもなります。

チームはSextonに今シーズンひとつの課題を与えました。それは「正しいゲームメイクをする判断力を持つこと」と「チームメイトをオフェンスに巻き込むこと」です。

個人的にはおそらくこれが、契約延長を渋ったフォーカルポイントだと思っています。

勝てるチームになる将来がまだ見えにくい状況ですが、Sexlandのガードコンビでチームを作ろうという方針はできています。その2人を活かすための早いゲーム作りのオフェンス方針。

そうなると、すでにゲームメイクに定評があり、ピックアンドロールも多用してきたGarlandをファーストオプションに置いた方が現状から目指すものに近付くだろう事は予想できます。

大型契約で戦力を確保するなら、優先順位は現状でゲームメイクに疑問があるSextonではなくGarlandです。

『Garlandのためにサラリーキャップに余裕を持たせておいて、Sextonはこれから1年でどうなるか見定めてから判断すれば良い』

『もちろんSexlandを形成したまま強くなれれば申し分ないが、替えがきかない人材はSextonよりGarland』

という事なんじゃないかなあ、とAJは邪推しています。

Sextonのモチベーション

今回契約延長を取れなかったことをエージェントから伝えられた時、Sextonは素直にショックだったと言います。

それは金銭の問題ではなく、このチームに長く貢献しようとしていたのにも関わらず契約を勝ち取れなかったことが理由でしょう。

しかし、彼は持ち前の闘争心でこの結果をモチベーションに変えようとしています。

Collin Sexton has something to prove after failing to reach extension with Cavs: ‘I take it as motivation’
Sexton and the Cavs didn't reach an extension at Monday's deadline. Now he comes into his fourth NBA season with more 'fuel to my fire.'

“この経験をモチベーションにするよ。ひたすら学んで成長するだけだ。チームが俺に何を求めてて、俺が目指している次のレベルに行くためには何をしなきゃいけないのか分かってる。だからひたすらプレイし続けるんだ、俺らしくハードに攻守両方プレイして、成長し続けて俺に何ができるか見せてやるんだ”

“I take it as motivation. Just to continue to get better, continue to learn and continue to improve. At the end of the day, I know what my team needs from me and I know what I have to do to even take that next jump to get to the next level that I want to be at. So I’m gonna go out and just continue to play, and play my game and play hard on both ends of the court and just continue to prove and show what I can do.”

-Collin Sext

今シーズンが終わった時、CavaliersがまだCollin Sextonのチームと言われていたら、彼が”見せつけてやった”証拠になるのかもしれませんね。

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